2024年度オンライン相談事業の報告

実施期間: 2023年10月~2024年9月

実施方法: 毎月2回日曜日の13:00~18:00、LINE / ZOOMの3者通話による相談(予約制)
      その他、Facebook,LINEへの上記相談日以外の相談には随時対応

対応言語: ベトナム語、インドネシア語、フィリピノ語、日本語

相談総数: 296件(ベトナム語230件、インドネシア語31件、フィリピノ語30件、日本語5件)


相談者の国籍  ベトナム 234  インドネシア 32  フィリピン 30

相談者の性別  女性 115  男性 181

相談者の住所地  関西 89  関東 54  中部 41

相談者の在留資格  技能実習 141  技術・人文知識・国際業務 63  特定技能 56  

相談内容  労働 213  在留資格 102


相談内容から

●技能実習生からの「解雇」相談が多数を占めた。目立ったのは、受入れ会社が解雇の通知をしないまま、在留期限になっても在留資格変更・更新の手続きをせず、実習生が帰国せざるをえなくなる方法で実質的な「解雇」を行うケースである。監理団体も次の受入れ会社を探そうとしない。このような事例に対し、外国人技能実習機構(OTIT)は会社を指導しようとはせず、労働基準監督署は、「通知がないなら解雇ではない」「在留資格の申請は外国人本人ができるはず」と、会社の協力なしには在留資格の申請ができない実習生たちの実態への理解がまったくない対応に終始する有様であった。

●実習生からは、日本人従業員からのパワハラ、暴行を訴える相談が少なくなく、同じ実習生間の人間関係のトラブルを訴える相談も寄せられた。トラブルの背景には、狭く劣悪な住環境が影響していると思われる事例もあった。受入れ会社が、実習生に安心して気持ちよく働いてもらえるような住環境の整備や、共に働く日本人従業員の意識変革に努力すべきと思わされた。

●労災の補償や失業手当受給の手続きに関する相談もあったが、技能実習生の場合は本来監理団体がサポートすべきである。残念ながら、監理団体から何の支援も受けられず、当然に受けられる補償を受けていない実習生が少なからずいることが明らかになった。

●労災治療中や、妊娠・出産、療養が必要な病気で長期間働くことができなくなった実習生に対し、会社、監理団体が一時帰国をすることを勧め、実習の再開を約束したにもかかわらず、再来日を拒んでいるという相談も数件あった。いずれの事例も、日本に滞在して労災の休業補償や、出産手当金、傷病手当金を受給しながら、実習の再開を待つことが可能であるし、帰国したとしても、従業員の地位を残した状態でこれらの補償は受けられるはずである。しかし、誰一人としてそのような選択肢があることを説明されてはおらず、帰国にあたって退職手続きをさせられてしまっていた。

●技能実習、特定技能1号の労働者から他の在留資格への変更に関する相談も多かった。日本で生活するなかで様々な状況の変化、とくに結婚など家族関係の変化に伴い、在留資格を就労によるものから家族関係に基づくものに変えたいという希望が少なくない。技術・人文知識・国際業務などの在留資格の場合は、配偶者と子どもに家族滞在の在留資格が認められるが、技能実習、特定技能1号では認められない。在留資格制度が外国人の生活実態に合ったものとなっていないことが問題である。

●特定技能1号、技術・人文知識・国際業務の労働者から、来日後の労働条件が約束と違っていた、来日後まったく仕事がなく、雇用関係のない会社で働くことを強要されたという相談が相次いでいる。送り出し国と日本にブローカーがいて、外国人労働者を日本に連れてくること自体で利益をあげており、来日後は労働者を放置、仕事がないため別の会社に転職しようとした労働者から、退職手続きに際し20万円支払わせたというひどいケースもあった。


支援によって解決した事例

▶相談者は技能実習の途中で解雇され、次の転籍先と雇用契約を結んで在留資格の変更手続きがされるのを待っていた。しかし、監理団体がOTITへの技能実習計画の提出を行わず、在留期限がせまってきて帰国を示唆された。RINKがOTITに申告し、OTITが監理団体に対し指導を行ったことで、無事手続きが行われ、相談者は技能実習を継続することができた。

▶日本語ができない、仕事が遅いという理由や、労災による怪我の治療中で以前のように働けないことを理由に解雇されそうになった実習生の事例では、各実習生が労組に加入、会社との交渉を通じて解雇はなくなった。

▶妊娠した実習生、特定技能の労働者から、産前産後休暇、育児休業を取得し、その後継続して働きたいという相談が数件あった。労組に加入し会社と団体交渉を行ったケースでは、すべて会社が労働者の希望を受け入れ、在留資格の更新にも協力した。

▶実習生の失業手当受給手続きに同行し、ハローワークの職員の「実習生は、自己都合退職の場合、失業手当が受給できない」という間違った対応に対し、抗議して誤りを認めさせた。

▶相談者は日本の会社と雇用契約を結び、技術・人文知識・国際業務の在留資格認定証明書交付申請の許可がおりるのを待っていたが、結果がなかなか出ないという相談があった。委任状を送ってもらい、入管局で情報開示の請求を行ったところ、申請が会社によって取り下げられていたことがわかった。仲介を頼んだ送り出し機関からは何の説明もされていなかった。不許可ではなく取り下げられたという事実が判明したことで、相談者はあらたに別の会社と契約して申請をし直すことができるようになった。

▶特定技能労働者から、住んでいたマンションの退去時のクリーニング代について相談があった。入居時にクリーニング代を前払いしていたはずなのに、退去時にマンションの契約者だった会社から請求されて支払った、間違いではないかと退職後何回も会社の担当者に連絡したが取りあってもらえないとのことであった。RINKが会社に調査を依頼したところ、会社の確認ミスだったことがわかり、二重払いになっていたクリーニング代が相談者に返金された。会社はRINKの介入以前にきちんと対応すべきであった。

オンライン相談(2024年4月~2024年6月)の報告

2024年4月  17件(ベトナム語 12件、インドネシア語 4件、フィリピン語 1件)

2024年5月  22件(ベトナム語 17件、インドネシア語 2件、フィリピン語 2件、日本語 1件)

2024年6月  19件(ベトナム語 16件、インドネシア語 2件、日本語 1件)


★ 3ヶ月の合計 58 件

★ 相談者の国籍:ベトナム 47、インドネシア 8、フィリピン 3

★ 相談者の性別:女性 24、男性 34

★ 相談者の住所地:関西 18、関東 16、中部 6 など

★ 相談者の在留資格:技能実習 26、特定技能 14、技術・人文知識・国際業務 13 など

★ 相談内容:労働 46、在留資格 22 など

*上記は、オンライン通話で相談を受けた件数だが、これ以外にFacebookのメッセージのやりとりで相談した件数が、3ヶ月で 20件近く (ベトナム語) あった。


【相談事例から】

技能実習生

・ 農業の技能実習 1号、急に会社から監理団体の寮に移って4日目になる。解雇通知書などはもらっていない。監理団体は次の仕事先を探すと言っているが本当に探してくれるか心配である。転籍先が決まるまでの生活もどうなるのか。
・ 有給休暇について知りたい。監理団体の人が有休はよほどの理由がないと使ってはいけないと言ったが、それは本当か。
・ 農業の技能実習 2号の1年目。農家から仕事ができないと指摘され、母国の家族が送出し機関から相談者を早く退職、帰国させるよう圧力をかけられている。
・ 板金の技能実習 1号。解雇通知書を渡され、今の会社では技能実習 1号から 2号への移行申請はしないと告げられた。移行のための試験には合格している。在留期限前なので監理団体が短期滞在への変更申請をすると言っているが、今後どうなるのか心配だ。

*相変わらず解雇事案が多い。転籍先が見つかるまで一定の時間がかかり、また絶対に見つかると保障されないこともあり、途中で「失踪」したり、あきらめて帰国したりする相談者も少なくない。


特定技能1号労働者

・ 来日2年目の特定技能介護労働者。内定を受けて7月から働く予定の事業所の契約内容をチェックしていると、実態にそぐわない点がいくつもあるので契約しないことにしたが、登録支援機関が「契約書に署名しようとしまいと新しい事業所で働け」と強要してくる。
・ 退職後新しい会社が見つかっていない。3ヶ月無職のままだと退去強制だと聞いているが。
・ 労働条件が契約書と異なるなどを理由に退職を申し出たところ、採用時には伝えられていないアパートの頭金を請求された。
・ 酪農の特定技能。転職して個人事業主のところで働いている。国民健康保険に入りたいが役所から社会保険の資格喪失届がないと手続きできないと言われ困っている。前の牧場には喪失届と源泉徴収票を郵送してくれるよう頼んでいるが、いまだに送ってくれない。

*特定技能の労働者からは、退職、転職に関係する相談が多い。就職活動に苦労しているという訴えもよく聞かれる。就労の在留資格には、3ヶ月以上正当な理由なく就労活動をしていない場合、在留資格を取消すという入管法の規定があるが、これは「3ヶ月無職のままだと退去強制だ」というわけではなく、就職活動を続けているが就職先が見つかっていない状況であれば、3ヶ月以上働いていなくても在留資格を取り消されることはない。


技術・人文知識・国際業務の労働者

・ 派遣会社を通じて工場で働いているが、残業が少なくて収入が低く、来日のための借金がなかなか返せない。辞めようと考えているが、派遣会社に在留期間延長のときに預けたパスポートと在留カードを返してもらえない。
・ 特定技能で来日後、派遣会社に雇用されて技術・人文知識・国際業務の在留資格に変更した。この会社では派遣先が見つからず4ヶ月間仕事ができていない。社会保険、厚生年金にも入れてくれていないので、国民年金料を支払うようにという通知がきているが、無収入なので払えない。
・ 12月に家族滞在の妻が出産する。その後自分が育児休業を取ろうと考えているが、会社は小規模の会社で、育児休業を認めてくれないのではないかと思う。労働者が育児休業を申し出たら会社は拒否できないはずである。もし拒否されたらどうすればいいか。

*技術・人文知識・国際業務の労働者からは、とくに派遣会社で雇用されているケースで相談が多かった。父親が育児休業を取得したいという相談も2件あった。


妊娠・出産

・ 特定技能 1号の労働者。妊娠中で出産予定日は10月。9月に在留期限、雇用契約の期限がくるが、会社は在留期間更新の手続きをしないと言っている。雇用契約期間は1年で、更新については更新する場合もあるとなっている。産前産後の休暇をとって日本で出産したい。夫も特定技能 1号で働いており、出産後少なくともしばらくの期間日本で親子いっしょに暮らしたい。
・ 2020年から特定技能 1号で働いている。雇用契約は半年更新のパート労働者になっており、今年1月1日から6月30日までの契約を結んでいる。8月に出産予定だが、会社から次回契約を更新しないと言われた。このため、産休・育休が取れなくなってしまう。(このケースでは、入管局には2025年までの雇用契約書が提出されていたことがわかり、入管局の指導により会社が雇用の継続、産休・育休の取得に同意した)
・ 食品加工の技能実習 2号の1年目。11月出産予定で、8月に一時帰国と考えていたが、体調が悪くなったことから、監理団体からは一旦退職して早めに帰国するように言われた。また、出産後についても会社が雇用を継続するかどうかわからないと言われている。退職ではなく休職して産前産後の休暇を取得し、来年2月に再来日して同じ会社で実習を継続したい。

*技能実習生、特定技能1号の女性労働者から、妊娠・出産に関する相談が目立っている。いくつかのケースでは、相談者が地域のユニオンに加入して、会社と団体交渉を行った結果、会社が雇用を継続し、在留期間更新に協力することに同意している。相談者の話からは、会社よりも監理団体や登録支援機関が、妊娠した労働者に辞めるよう圧力をかける傾向があるように思われる。

オンライン相談(2024年1月~2024年3月)の報告

2024年1月  20件(ベトナム語 13件、インドネシア語 4件、フィリピン語 2件、日本語 1件)

2024年2月  21件(ベトナム語 14件、インドネシア語 3件、フィリピン語 3件、日本語 1件)

2024年3月  23件(ベトナム語 16件、インドネシア語 3件、フィリピン語 4件)


★ 3ヶ月の合計 64 件

★ 相談者の国籍:ベトナム 44、インドネシア 11、フィリピン 9

★ 相談者の性別:女性 19、男性 45

★ 相談者の住所地:関西 16、関東 4、中部 10 など

★ 相談者の在留資格:技能実習 35、特定技能 12、技術・人文知識・国際業務 7 など

★ 相談内容:労働 48、在留資格 28 など

*上記は、オンライン通話で相談を受けた件数だが、これ以外にFacebookのメッセージのやりとりで相談した件数が、3ヶ月で 30件近く (ベトナム語) あった。


【相談事例から】

技能実習生

・溶接の職種で技能実習するということだったが、実際には建設関係で足場や解体の仕事をしている。仕事がきついし、人間関係も良くないので転職したい。
・来日して5か月の建設技能実習生。毎日頭を殴られるので、監理団体は我慢しろと言うが移籍したい。
・技能実習先が来月倒産する。就労は今月末までだが、監理団体は自分で就労先を探せと言い、逃亡を強く勧めている。
・縫製の実習生。在留期限の1ヶ月前に、監理団体から今の会社では技能実習1号から2号への移行申請はしないと告げられた。移行のための試験には合格している。監理団体は転籍先を探すと言っているが、信用できない。実習を続けたいので助けてほしい。
・食品加工の技能実習生。1年目で技能検定試験には合格している。在留期限間際に急にこの会社で2号に移行はできなくなったと言われた。監理団体から別の会社を探すのは難しいので、特定技能の試験を受けてはどうかと言われている。また、解雇通知がほしいと言ったところ、自己退職すると書かれた見本を見せられ、これを自筆で書くように言われたが、まだ書いていない。
・来日5ヶ月の縫製の実習生。会社と監理団体から、日本語ができない、仕事の要領が悪いという理由で2週間後に帰国するようにと言われた。1ヶ月前くらいから自分だけ残業をさせてもらえていない。

*実習1年目での解雇の事例が目立った。解雇事案に対し、監理団体が実習継続の義務を果たそうとしない事例も散見された。


特定技能1号労働者

・アーク溶接の実習生として働き、同じ会社で特定技能1号に移行して働き続けたが、最近退職した。まだ次の働き先は見つかっていない。実は前の会社ではほとんど溶接の仕事はしていなかった。次の会社では溶接の経験がないことがわかって働けないのではないかと心配である。
・同じ会社で技能実習から特定技能1号に移行して働いている。本当の職種は金属プレスだが、ずっと溶接の仕事をさせられている。
・来日3ヶ月の特定技能1号労働者。賃金が以前技能実習生として就労していた時期よりも低く、転職したい。
・特定技能1号で働いている。寮の家電などの使用料を決められていて、先輩たちが途中で辞めるときに、一定の費用を払わされている。自分が辞めるときにそうならないようにするにはどうすればいいか。
・建設の特定技能1号労働者。来日3ヵ月だが、退職を申し入れたところ、「在留資格申請等の為、50万円かかりましたので、私は1年未満で退職するということで損害金40万円を会社に支払する」という同意書の署名を強いられている。内訳も渡された。
・特定技能1号の農業で働いていたが、介護の特定技能に移るため、まだ入管の許可が下りていないのに会社に言われて働いた(資格外就労になって入管法違反である)。そこは辞めて今別の介護事業所で在留資格の手続き中である。前の事業所で1ヶ月と4日間の賃金が未払いになっている。給料日に受け取りに行ったところ、アパートの頭金が8万円もかかったなどと言われ支払ってもらえなかった。

*特定技能の労働者が増加しているなか、相談も確実に増えている。
技能実習から同一職種の特定技能への移行申請は、試験ルートに比べて認められやすくなっている。しかし、相談事例のように実際には違う職種の仕事をさせられている事例も多く、そんな場合は実習時と異なる会社で働くことが事実上難しくなるため、同じ会社で継続して働くしかなくなってしまう。制度の不正運用によって労働者の転職の自由が事実上奪われている。
退職に際して会社が諸費用を請求する事例は、在留資格にかかわらず後を絶たない。たいていは最後の給与から天引きされる。天引き自体が労基法違反であるが、労基署に申告しても会社が支払いに応じず、労働者が泣き寝入りするしかない結果となっている。


妊娠・出産

・特定技能1号で働いていたが、帰国して出産した。帰国前に会社は雇用を継続し、産休、育休をとれると言っていた。しかし、母国にいる間に突然メールで雇用を継続しないと言ってきた。
・2025年まで3年間特定技能1号の雇用契約を結んでいる。今妊娠中で、飛行機に搭乗できるぎりぎりまで働いて帰国して出産するつもりである。会社に妊娠を告げたところ辞めろとはいわれなかったが、やんわりと危ないから辞めてはどうかと言われた。実際にはそんなに危険な仕事ではない。在留期間更新が出産予定日の翌月なので、会社が更新に協力してくれるかどうか心配している。
・特定技能1号で妊娠5ヶ月。帰国して出産し、再来日して働き続けたいと会社に伝えたところ、会社と登録支援機関から帰国前に辞めるように、在留期間更新には協力しないと言われた。雇用契約は2026年まで3年間で自動更新するとなっている。出産予定日と在留期限は同じ月である。

*特定技能1号の女性労働者から妊娠・出産に関する相談が続いている。労働契約は3年間でも、在留期間が1年ごとの更新なので、少なくない会社が、在留期間更新の手続きをしないことによって、事実上労働関係法規で禁止されている妊娠・出産を理由とした不当な解雇を行なっている。このような相談事例について、在留期間更新がされ、労働法の規定通り雇用が継続されるよう、労働組合とも連携して取り組んでいく予定である。

オンライン相談(2023年10月~2023年12月)の報告

2023年10月 18 件(ベトナム語 12 件、インドネシア語 3 件、フィリピン語 3 件)

2023年11月  15 件(ベトナム語 12 件、インドネシア語 1 件、フィリピン語 2 件)

2023年12月 17 件(ベトナム語 12 件、インドネシア語 2 件、フィリピン語 3 件)


3ヶ月の合計 50 件

相談者の国籍:ベトナム 36、インドネシア 6、フィリピン 8

相談者の性別:女性 21、男性 29

相談者の住所地:関西 14、関東 11、中部 10 など

相談者の在留資格:技能実習 30、特定技能 9、技術・人文知識・国際業務 8 など

相談内容:労働 44、在留資格 15 など

*上記は、オンライン通話で相談を受けた件数だが、これ以外にFacebookのメッセージのやりとりで相談した件数が、3ヶ月で 30 件(ベトナム語)あった。


【相談事例から】

労働災害

・仕事中にけがをした。労災補償について基本的なことを知りたい。
・労働災害で入院中。会社が労災申請しているかどうかがわからない。
・労災の治療中。後遺障害が残りそうだが、何か補償があるのか。
・労災で治療中だが、技能実習の期間が満期になったので、監理団体から帰国して治療を継続するよう言われている。
・労災で入院中の技能実習生。会社から退院したら賃金を3ヶ月分100%支払うので、帰国するよう言われている。労災申請はされていないようだ。

*労働災害の相談は相変わらず多い。在留資格に関わらず、相談者本人に労災補償についての基本的な知識がない。申請は決して複雑なものではなく、通訳や助言などの支援があれば相談者自身でやれるはずだが、相談先に行きついていない外国人も少なくないと思われる。とくに技能実習生については、滞在期間が限られるなどの事情があり、治療途中で帰国した場合、その後の休業補償や障害補償の手続きが問題なくできているのか、気になるところである。


解雇

・2年目の技能実習生。会社と監理団体から、日本語ができない、仕事が覚えられないという理由で、もうこの会社にはいられないので退職届を書けと言われた。
・労災で手の指を負傷し職場復帰はしたが、重いものを持てないため、この工場には軽い仕事はないので退職するようにと言われた。
・1年目の技能実習生。日本人の上司が相談者の仕事のやり方が気に入らないと監理団体に告げたため、やめさせられそうになっている。
・1年目の技能実習生。仕事が遅いと叱られ、その後監理団体からこの会社での仕事は1ヶ月後に終わり、次の会社が見つからない時は帰国するしかないと言われた。
・前の会社を解雇され、その後次の会社と雇用契約を結んだが、数ヶ月待機させられたままである。監理団体からは技能実習機構からの許可が下りないので、在留期限がきたら帰国するしかないと説明されている。

*合理的な理由のない安易な解雇事案も途切れることがない。これらの相談のうち、2件については相談者が地元の労働組合に加入して、会社、監理団体に解雇撤回の申し入れを行った。その結果解雇は撤回され、相談者は実習を継続している。
また、最後の事例では、RINKのアドバイスを受けた相談者が技能実習機構に相談したところ、監理団体は機構に対し次の受入れ先がなかなか見つからないと説明していたことがわかった。機構の指導により監理団体はすぐに対応し、相談者は帰国せずに技能実習の再開を待つことができるようになった。相談者が監理団体の説明を信じて相談せずにいたら、実習継続の希望を実現することはできなかった。
この事例でもわかるように、技能実習生や特定技能労働者の在留資格の手続きは、ほぼ監理団体、登録支援機関が行なうため、手続きの現状が本人にはよくわからないという事態がうまれている。在留資格の手続きについて、監理団体などには本人への申請書類の提示や説明責任を義務付けるべきではないだろうか。


特定技能

・退職を考えている。雇用契約書には1ヶ月前に意思表示すればいいと書いてあるが、登録支援機関からは3ヶ月前に伝えないといけないと言われた。
・前の会社で働いていたときの、最後の半月分の賃金が未払いのままになっている。
・労働契約を締結する際、1年6ヶ月未満で自ら退職する場合、ビザ取得費用の12万円を会社に返還するという約定を交わさせられた。
・まだ入管からの在留資格の許可が出ていないのに、登録支援機関から人手がいるので働くように言われた。

*特定技能労働者では、退職の申し出時期や退職時の違約金規定などについて、問題のある事例があった。とくに最後の事例では、登録支援機関に順法精神がまったくないことが見てとれる。このような実態で労働者の権利が守られるのか大きな疑問を抱かざるをえない。


妊娠・出産

・特定技能1号で現在妊娠中。出産予定日の5ヶ月後に雇用契約と在留資格の期限がくる。今後産休と育休を取りたいが、会社は契約を更新するかどうかはわからないと言っている。
・現在育児休業中の技術者。もうすぐ契約期限(3か月契約の連続更新・継続約2年)が来るが、次は更新しないと言われた。

*日本で出産して子育てをしながら働き続けたいという外国人女性労働者も増えてきている。壁となるのが、在留資格と雇用形態だ。特定技能1号は最長の在留期間が1年で、在留期間満了時に雇用契約を打ち切られると、同じ在留資格で日本に残ること自体が難しくなってしまう。技術・人文知識・国際業務の在留資格の労働者も、最近は有期契約や派遣契約で働いている人が多くなっており、契約更新を拒否されることで、産休、育休を取得し続けることが難しくなっている。

2023年度オンライン相談事業の報告

実施期間: 2022年12月~2023年9月

実施方法: 毎月2回日曜日の13:00~18:00、LINE / ZOOMの3者通話による相談(予約制)
      その他、Facebook,LINEへの上記相談日以外の相談には随時対応

対応言語: ベトナム語、インドネシア語、フィリピノ語、日本語

相談総数: 170件(ベトナム語 112件、インドネシア語 36件、フィリピノ語 16件、日本語 6件、英語 1件)


相談者の国籍  ベトナム 116  インドネシア 37  フィリピン 17

相談者の性別  女性 54  男性 115  不明 1

相談者の住所地  関西 49  関東 38  中部 26

相談者の在留資格  技能実習 79  技術・人文知識・国際業務 35  特定技能 35  

相談内容  労働 129  在留資格 49


相談内容から

●技能実習生では、パワハラを受けているという相談や、正当な理由とは思われない理由で実質的な解雇をされている事例が目立った。先に会社、監理団体からもう雇えないと言われているにもかかわらず、退職届にサインさせられ自分から辞めたということになっていることが多く、帰国同意書にもサインさせられている事例があった。
 →技能実習法では、解雇された(退職した)実習生が実習の継続を希望する場合、会社、監理団体は転籍先探しに協力しなければならないとされているが、それが守られない事例が少なくない。

●特定技能や技術・人文知識・国際業務の労働者では、退職に伴い、会社から諸費用を請求(実質的に違約金の請求)されている事例が多かった。
 →会社を辞めさせないための違約金の取り決めは、労基法16条で禁止されているが、様々な名目で退職する労働者に費用を請求する会社が増えている。

●どの在留資格の労働者からも労働災害に関する相談が多く寄せられ、日本の労働災害補償の制度について正確な知識が不足していることがわかった。
 →技能実習生や特定技能労働者については、監理団体や登録支援機関の支援があるはずだが、充分な支援がされていないことが見てとれる。

●妊娠に関する相談や、日本での結婚に伴う在留資格の変更、日本で生まれた子どもの在留資格に関する相談が増えつつある。
 →技能実習生や特定技能労働者は家族とともに日本で暮らすことが想定されていないが、若年の外国人労働者が増加するなか、在留資格にかかわらず日本で家族として暮らしたいと望む人たちは、今後確実に増えてくると思われる。


実際に同行支援した事例

▶農業の技能実習生。1号から2号移行のための検定試験にも合格したが、在留期限直前に突然解雇通知を渡された。相談者は実習の継続を希望し、監理団体に転籍先を探すよう要求したが、監理団体は帰国するよう促した。相談者は外国人技能実習機構(OTIT)の母国語相談にも連絡したが、帰国するようにというアドバイスしかもらえなかった。
在留期限当日に入管局に同行支援を行い、短期滞在90日への在留資格変更申請を行った。申請は受付けられ、数週間後変更が認められた。在留が認められたことにより、相談者はOTITの支援を受けて転籍先を見つけることができ、その後新しい会社で実習を継続することができた。

▶通勤途上に交通事故に遭った特定技能労働者。保険会社との交渉は日本語でのコミュニケーションに限界がある相談者には難しく、会社や登録支援機関の支援も充分ではなかった。交通事故に詳しく外国人労働者の状況にも理解のある弁護士を紹介し、相談者は労働災害保険の申請や、後遺障害認定手続き、保険会社との交渉を弁護士に依頼することになった。

▶来日後1年未満で退職したため、諸費用を請求され、2か月分の給料が支払われなかった技術・人文知識・国際業務の労働者。会社の行為は、給料はまず労働者に全額を払わねばならないという労基法24条に違反していることから、労基署に同行支援を行い、会社の違反を申告した。監督官の指導により会社は給料の支払いに同意したが、一旦相談者に給料を渡して、その場で諸費用を請求するという方法で対応してきたため、最終的に相談者は泣き寝入りせざるをえなかった。

▶来日後就労予定だった派遣先が受け入れを中止したため、生活困窮に陥っていた技術・人文知識・国際業務の労働者。他団体と協力して、支援物資としてお米、カップ麺などを届けた。その後派遣元の会社は相談者に休業手当を支払うとともに、新しい派遣先を探すことを確約した。

*この事業は2024年度も(公財)パブリックリソース財団の移民・難民支援基金の助成を受けて継続します。

オンライン相談(2023年4月~2023年7月)の報告

2023年4月  23件(ベトナム語9件、インドネシア語10件、フィリピン語3件、日本語1件)

2023年5月  17件(ベトナム語9件、インドネシア語4件、フィリピン語3件、日本語1件)

2023年6月  22件(ベトナム語15件、インドネシア語5件、フィリピン語1件、日本語1件)

2023年7月  14件(ベトナム語8件、インドネシア語2件、フィリピン語3件、日本語1件)


4ヶ月の合計 76件

相談者の国籍:ベトナム43、インドネシア22、フィリピン11

相談者の性別:女性31、男性44、不明1

相談者の住所地:関西21、関東14、中部13など

相談者の在留資格:技能実習27、特定技能18、技術・人文知識・国際業務22など

相談内容:労働56、在留資格19など


相談事例から

特定技能、技術・人文知識・国際業務の労働者から、会社に退職を申し入れたところ、会社から費用の支払いを請求されたという相談が目立った。とくに来日してすぐ、あるいは在留期間更新をしてすぐの退職に対して、在留資格手続きにかかった費用を払え、会社が用意した住居の一部費用を払えなど、様々な名目で支払いを請求される事例が多い。労働者には転職の自由があり、それを制限するような会社の行為は問題である。また、請求費用を最後の給与から天引きする事例も少なくないが、これは労基法に定められた賃金全額払いの原則にも違反している。ただ、相談は寄せられているが、実際にRINKのサポートによって問題が解決された事例がなく、多くの労働者があきらめて費用を支払っているのではないかと思われる。

技能実習1号で検定試験にも合格し、技能実習2号へ移行できると思っていた実習生が、会社から在留期限の10日前に突然解雇され、帰国を迫られたという相談があった。相談者はRINKのサポートにより入管局で在留資格をまず短期滞在90日に変更し、外国人技能実習機構(OTIT)の転籍支援を受けて、無事転籍先が決まり、技能実習を継続できることになった。この実習生はOTITの母国語相談にも数回相談したが、母国語相談では帰国した方がいいと告げられたそうである。

日本人の同僚から暴力を受けたことがきっかけで、帰国することを決めた実習生は、本当は帰国したくないと相談してきた。大阪からは遠いやや辺鄙な地域だったので、OTITの母国語相談に相談するよう勧めた。携帯電話の契約をしていなかった実習生は、翌日自転車で2時間かけて走り回ったが、公衆電話を見つけることができず、OTITに相談することをあきらめて帰国していった。

これらの事例から、OTITの相談対応の内容と、相談手段について、本当に実習生の立場に立った実習生が相談しやすいものとなっているのか、見直しが必要ではないかと感じた。

オンライン相談(2022年12月~2023年3月)の報告

2022年12月 18 件(ベトナム語 12件、インドネシア語 5件、フィリピン語 1件)

2023年1月  13 件(ベトナム語 10件、インドネシア語 2件、フィリピン語 1件)

2023年2月  12 件(ベトナム語 10件、インドネシア語 1件、フィリピノ語 1件)

2023年3月  12 件(ベトナム語 6件、インドネシア語 3件、英語 1件、日本語 2件)


4ヶ月の合計 55件

相談者の国籍:ベトナム 40、インドネシア 11、フィリピン 4

相談者の性別:女性 9、男性 46

相談者の住所地:関西 15、関東 20、中部 5など

相談者の在留資格:技能実習 26、特定技能 13、技術・人文知識・国際業務 7 など

相談内容:労働 42、在留資格 16など


技能実習生、特定技能労働者からの、労働災害で後遺障害が残る場合の障害補償給付申請に関する相談が目立った。本人は労災保険の制度について知識がなく、会社や監理団体・登録支援機関からもサポートを受けることができていない。
今後申請に向けて継続した支援が必要である。

技能実習生では、職場でのいじめやパワハラ、暴力を訴える相談が多く寄せられた。我慢できずに「失踪」してしまった実習生もいたが、彼らを追いつめる技能実習の実態が改善されなければ、「失踪」はなくならないと思わされた。

特定技能労働者からの相談が増えている。別の会社で働く、ともに特定技能労働者の夫婦からは、日本で子どもを産み育てたいがどうすればいいかという相談があった。

特定技能の労働者は、母国から家族(配偶者と子ども)を呼び寄せることができない。日本で出産した場合は、当初子どもに「特定活動6ヶ月」が認められるが、原則更新はしないとされている。しかし、最近子どもの在留期間更新がされ、特定技能労働者同士の夫婦が子育てしながら働いているケースが全国で何件か出てきている。子どもだけ母国に帰せとせまるような在留資格制度上の制限にこそ問題があると思う。

一方日本で夫婦が子育てしながら働き続けることは決して簡単ではない。今回のような相談に対しては、今後子どもの在留資格の問題だけではなく、子育てを含む生活全般にわたるサポートが必要となってくると思われる。

2022年度オンライン相談事業の報告

実施期間: 2021年12月~2022年11月

実施方法: 毎月2回日曜日の13:00~18:00、LINE / ZOOMの3者通話による相談(予約制)
      その他、Facebook,LINEへの上記相談日以外の相談には随時対応

対応言語: ベトナム語、インドネシア語、フィリピノ語、日本語

相談総数: 143件(ベトナム語 96件、インドネシア語 27件、フィリピノ語 12件、日本語 7件、英語 1件)


相談者の国籍  ベトナム 103  インドネシア 27  フィリピン 12  エジプト 1

相談者の性別  女性 42  男性 101

相談者の住所地  関西 44  関東 31  中部 21

相談者の在留資格  技能実習 71  技術・人文知識・国際業務 24  特定技能 17  

相談内容  労働 100  在留資格 43  社会保障 7


解決した事例

●技能実習生が労働災害で負傷、後遺障害が残ったが、会社、監理団体が労災の障害補償給付申請手続きに協力してくれないと相談
 →オンライン相談で継続して申請書の書き方や手続きの手順をアドバイスすることにより、本人が自力で申請を行い、障害等級が認められ補償給付を受け取ることができた。

●会社から急に解雇を言い渡された技能実習生からの相談
 →地元の労働組合を紹介、本人が労組に加入後、労組から会社に対し加入通知・団交申し入れ書を送ったところ、すぐに解雇が撤回された。

●実習指導員による日常的な暴力に耐え切れず「失踪」した技能実習生、会社に解雇された後帰国困難による特定活動で在留期間更新をしていた元技能実習生が、残余期間の実習継続を希望して相談
 →外国人技能実習機構(OTIT)大阪事務所に同行、OTITの転職支援により両事例とも新たな実習先が確保された。

●来日後の健康診断で仕事に影響する先天的な病状があることがわかり、会社から就労を拒否されて監理団体に強制帰国させられそうになった技能実習生が、関空で強制帰国であることを入管に訴え、帰国便に搭乗せずにRINKのFBに相談
 →強制帰国当日の夜はホテルでの宿泊を支援し、翌日OTITに同行、OTITの調査により送り出し機関が虚偽の健康診断結果を提出していたことがわかり、送り出し機関・監理団体との協議の結果、本人の支払った手数料を返還することで合意ができ、合意書の締結後本人は帰国した。

*この事業は2023年度も(公財)パブリックリソース財団の移民・難民支援基金の助成を受けて継続します。

オンライン相談 (2022年6月~2022年8月) の報告

2022年6月

申し込み:4件 (ベトナム語 4件)
相談  :13件(ベトナム語 10件、フィリピノ語 2件、英語 1件)

2022年7月 

申し込み:6件(ベトナム語 3件、インドネシア語 3件)
相談  :9件(ベトナム語 4件、インドネシア語 4件、日本語 1件)

2022年8月

申し込み: 8件(ベトナム語 6件、インドネシア語 1件、フィリピノ語 1件)
相談  :14件(ベトナム語 8件、インドネシア語 1件、フィリピノ語 4件、日本語 1件)

3ヶ月の合計  申し込み:18件、 相談:36件

(注)継続相談で相談日に申し込みのないまま対応したケースや、SNSでのやりとりで相談日では間に合わないため早めに対応したケースなどが増加しており、実際の相談件数が申し込み件数の2倍となっている。


★相談者の国籍:ベトナム 24、インドネシア 5、フィリピン 6、エジプト 1

★相談者の性別:女性 8、男性 28

★相談者の住所地:関西 15、関東 8、中部 3 など

★相談者の在留資格:技能実習 16、技術・人文知識・国際業務 9、特定活動 6 など

★相談内容:労働 27、在留資格 14 など

2022年3月からコロナによる入国制限が緩和されたことにより、新規に来日する技能実習生が増えている。
この3ヶ月の相談では、来日間もない技能実習生からの、
「仕事をきちんと教えてもらえない」
「母国で聞いていたことと実際の条件が違う」
「日常的にパワハラを受けている」
などという訴えが目立った。

オンライン相談 (2022年3月~2022年5月) の報告

2022年3月

申し込み:9件(ベトナム語6件、インドネシア語3件)
相談  :12件(ベトナム語8件、インドネシア語3件、日本語1件)

2022年4月

申し込み:9件(ベトナム語6件、インドネシア語3件)
相談  :12件(ベトナム語8件、インドネシア語3件、日本語1件)

2022年5月

申し込み:8件(ベトナム語6件、インドネシア語2件)
相談  :10件(ベトナム語7件、インドネシア語2件、フィリピノ語1件)

3ヶ月の合計 申し込み:26件、相談34件

(注)継続相談で申し込みのないまま対応したケースや、FBでのやりとりで相談日では間に合わないため早めに対応したケースなどがあるので、申し込み件数より実際の相談件数が多くなっている。

相談の詳細

相談者の国籍  :ベトナム25、インドネシア8、フィリピン1

相談者の性別  :女性14、男性20

相談者の住所地 :関西11、関東8、中部5など

相談者の在留資格:技能実習14、特定技能5、技術・人文知識・国際業務5など

相談内容    :労働22、在留資格11など

突然の解雇や退職をめぐる会社とのトラブルに関する相談や、技能実習・特定活動から特定技能などへの在留資格変更に関する相談などが目立った。